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“人間は金よりも尊い“

キューバを襲う猛ハリケーン
ひとりの人間も見捨てないキューバ

椰子の樹が暴風にあおられている。
今にもひきちぎられそうな葉が必死で耐えている。
海は、灰色に化した波が大暴れしている。
濁流が家屋を呑み込み、流されている人を、子どもを、救援隊が飛び込み助けている、、。
港に舫だ大きな船が、波に押されて陸地の奥まで運ばれた。
町が畑が、海になってしまった。
過ぎた今、テレビで見ても恐ろしい光景。

9月、キューバを襲った二つのハリケーン、グスタフとアイクは前代未聞の大型ハリケーン。キューバの東から西へ、カリブ海側を全島通過した。
そして再び10月、ハリケーン、パロマは西部を直撃、横切った。
破壊された家屋・病院・学校、、そして壊滅状態の農作物と家畜。

米国の経済封鎖を長期にわたって受けているキューバは経済の貧しい国。
そこへ今回のハリケーン。
被災総額は想像を絶する。

フィデル・カストロが、
「せめて復旧させるまでの半年間だけでも“封鎖”を解除奏でさせられないだろうか」
と、米国へ言ったのだが。

キューバの人気バンド、ロス・バンバンの演奏で人々が踊っている。
観ている観衆も手を叩き愉しそうだ。

母親に抱っこされた子どもに司会者がインタビューする、
「誰と踊るの?」
「ママと踊るヨ」
若い女性たちが、
「バンバンの生演奏、はじめてよ〜」と腰を振る。

ハリケーンが行過ぎるとすぐにも被災各地に、多くの演奏家や子ども劇団などが訪れた、
人々を励ますために。

無論、政府のリーダーたちは暴風雨の最中から現地へ飛んでいる。
家を失った年配の女性が、怖かった状況を泣きながら話している。
励ます人々。
畑に出る農民たち。

被災者たちが、
「政府の援助に感謝する、頑張る」と語っている。
ボランティアの人々が復旧作業に参加している。

深刻な状況に違いないのだが、伝わってくるのは人々の温もり、はじけるエネルギー。
活気に満ちてくる人々の顔の美しいこと。
それは、一人の人間も見捨てない、みんなが助け合うキューバ式連帯の姿。
或る女性が語っていた、
「自分は靴が無いので欲しいと思っていた、脚の無い人がいるというのに。今、とても恥ずかしい」。

私がここに暮らして、野菜が足りなかったり、交通事情が改善されたとはいえ不十分なのに、究極の安心感を持てるのはこれなのだ。一人の人間も見捨てることはないキューバ社会の在り方。

「自己責任」と言って自身の仕事から責任逃れし、国民を見捨てる日本の官僚たちと決定的に違うのだ。
今の日本は国としての責任感が無い。

かつて日本は美しい自然と独自の伝統文化・食文化を持していた。
日本建築は世界でも抜群の強さと美を誇る。世界の人々から憧れを持たれる所以だ。
それが、首都をはじめ日本中がアメリカナイズされ、破壊されてきた。一部の心無い人、拝金主義に侵された輩に。

私の親友がいつも言う、
「奪い合えば不足するが、分かち合えば余る。自分が少し退いて考える方が(退きすぎてはいけないのだが)、お互いが対等平等になってくる。そんな人間関係の方が、いがみ合うよりずっと気持ちが良い」と。

農業・教育・医療を金儲けの対象にするな

石油欲しさに戦争を仕掛けるアメリカ、たかが石油のために。それに追従する日本。
食糧をエネルギーに変換させる愚かさ。強欲に走ってはきりが無い。
世界を独り占めして何が愉しいのか、と訊きたい。
世界中に敵を作り出しているだけではないのか?

「何故、旅行するのか?」と問えば、
「異文化や自分の知らない世界に触れるため」と人は答えるだろう。

ならば、何故、異文化を排斥するのか、知らない人種や自然があるから面白いのに。
米国が世界を席捲して米国だけの文化になったら、こんなつまらないことは無い、と彼ら自身が思うことだろう。

温暖化の地球危機が迫っているのに戦争をする者が居る。
軍事産業に知恵や金を使うより、健康や天然自然を保持するために努力する方が賢い。

世界の飢餓人口が、8億5640万人、10歳以下の子どもたちが、5秒に1人ずつ、死んでいる。一方で、金のために食糧まで投機の対象にしている。

助けられる子どもを、こともあろうに売買するケダモノのような人間がいる、単に金のために。
いまや、何でもありの堕落しきった世界。これで良い筈がないだろうと言いたい。
みんなではっきり表明しようではないか。マネーゲームは終わらせよう、と。

農業・医療・教育を金儲けの対象にしてはいけない。
これらは国・政府が国民に責任をもつべきこと。
この実践をしているキューバ。
生命の源である農業、命を守る医療、より良い人間に育ちあう教育が、どれほど高貴な営みであることか。
人間は金よりも尊い。

“今日の夢はかならずや未来の現実となる”

フィデル・カストロが言う、
「“巨大なカジノ”となっている現在の世界、、 人類はより理性的かつ人道的に、自らの生命と未来を変える能力があるはず、なぜ、ほかのありようを追求しようとしないのか?」
「全地球人が互いに支え合う関係、この改革が成功しなければ、地球の自然環境及び、地球に住む人類の未来は非常に危うい。今や、一刻の猶予も許されない。一日も早く、新しい世界を創立するべきである。これは客観的必然に迫られた構想であり、他に選択肢はない」と。

人間同士、お互いが敬意を持てるような、愛を感じられるような、みんなで笑って暮らせる社会を、日本を、世界を創り出して行くことは充分可能なことだと私も信ずる。

ジョン・レノンの言うようにそれをイメージして、そのためにこそ、人類の知恵とエネルギーをかけるべく、私たちは努力していこうではないか。

フィデルが言うように、
“今日の夢はかならずや未来の現実となる”だろう。
これが、キューバが世界に向けて発信している核心だと思う。


今日もご縁を頂いてありがとうございました。
!VAYA CON DIOS!
あなたに幸あれ♪




★雑誌「ひとりから」40号 2008年12月号掲載。


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岡惚れ、ベタ惚れ、ビバ!クーバ(万歳!キューバ)!
愉しく生きられる祖国になろうヨ!
人間は金よりも尊い
"愛"を持って闘ったキューバ
食べ物をもてあそんではなりません